カレーコロッケは死なず
大人になると食べ物の好みが変わるというのはよく聞く話で、私も老化という花園の収容所に入所したためか、たまに遭遇する。
大きな出来事が起こり、ある日を境に人生観がすっかり変わってしまうみたいな話じゃないけれど、川底の砂が削れるみたいに自分でも気付かないうちに、こっそり、日々ちいさな変化は起こっているから、ある日すっかり変わってしまっている(変わり果てている)自分に遭遇して唖然としてしまうことになる。
食事というのは毎日するものだし、そのうえ、外食や好奇心で普段とは違うものを食べる機会も定期的に来るので、どうもその「唖然」に遭遇しやすいみたいだ。
やれピーマンが食べれるようになった、どころか大好物になって、肉詰めから剥がして準ハンバーグとして食べていた過去の自分を殴りたいなんて話は本当によく聞く。
こないだ私が気づいたそれはカレーコロッケ。
スーパーで買い物していたら、冷食コーナーにレンジするだけで食べられるコロッケがあって、安かった。買おうと思ったら2種類ある。普通のコロッケと、カレーコロッケ。カレーコロッケの方が20円安い。
知ってますか?カレーコロッケ。
はんぶんに割るとジャガイモがターメリックの色。カレー粉で風味づけされてて、普通のコロッケよりどっしりとした食べ応えがある。が、何というか子供騙しっぽい感じもする。野菜嫌いの子供にお母さんが思いついたアイデアというか。おかげで普通のコロッケに比べてむしろ安っぽい味がする。
私以外の人もそう思うのか、カレー粉の分手間がかかっていると思われるにもかかわらず、カレーコロッケの方が安くなっていて、余っていた。
私だって普通のコロッケの方が好きだと思っていたが、安いし、何より小学生の頃の給食いらいじゃないかななんて思ったら、なんだか急に食べたい気分になってしまった。郷愁?
ラップなしでレンジする。
案外衣はカリッとしてる。ふにゃけたスーパーのコロッケよりはよほどコロッケらしい。口に運ぶと本格的ではないカレーの懐かしい香りがする。ちょっとインド人に似てる顔立ちの日本人みたいな。
でも普通のコロッケよりジャガイモの甘みを感じるのはカレーの香りせいか。それがどっしりとした食べ応えを生む。
普通のコロッケをおかずにご飯はいけるし、カレーライスは言わずもがな。だが不思議なことに、カレーコロッケはそんなにご飯と仲良くないとおもう。理由はよくわからないが。
缶チューハイを片手に、小さく切り取ったやつを少しずつ食べるのがいい。
ちょっと食べては一口飲んで、ちょっと食べては一口飲む。
気づいたときにはその安っぽさも、味わいとして認めてもいい気がしている。どころか好きだなとさえ思う。
ひと月後なら、また食べたいなと思う。
だが、同じコロッケ枠でもグリーンピースとコーンの入ったやつは、未だ受け入れることはできない。いわゆる「ただし、テメーはダメだ」である。